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★夢幻泡影★ (むげんほうよう)

~尽きてゆく魂の詩~

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死にかけた話 ~前編~

わたしは今までに、3回、死にかけたことがある。

1度目は、わたしが4歳か5歳ごろ、
まだ幼稚園に通っていたころの話だ。

幼稚園へ向かうバスを待っていたわたしは、
反対側からきたトラックに跳ね飛ばされた。

体重が軽かったせいもあってか、わたし
の体は、10メートルもフッ飛んでいった。

病院で手術を終え、目を覚ますと、わたしは
水をゴクゴクと飲みほして、「おいちぃ」と
つぶやいたのだという。

しかし、これらのことはすべて、後になって
親から聞いた話である。わたし自身には、
このときの記憶が、まったくないのだ。

それにしても、わたしの母は、事故当時、幼稚
園児であるわたしの手を、なぜ、ちゃんと
握っていてくれなかったのだろうか?

この事故によってわたしは、上唇がパックリと
割れて、顔にキズを負ったのだ。が、わたしの
両親は、この暴走トラックの運転手から、一生
残る顔のキズに見合うだけの慰謝料を、
ちゃんと受け取ったのだろうか?

もう30年以上も昔のハナシなのだが、
この歳になって、冷静に考えてみると、
なんとも納得のいかないことばかりだ。

手術後、舌たらずに「おいちぃ」と言ったことを、
わたしはその後、長年にわたって、両親から、こと
あるごとに、笑われ、馬鹿にされ、嘲られ続けた。

だが、わたしは、この事故の被害者なのである。

事件の加害者は、なんの責めも咎も受けず、無罪放免。

なのに、なぜ、事件の被害者であるわたしが、
このような屈辱を受けなければならないのか? 

わたしは子供心に、ずいぶんと理不尽に感じたものだ。

123.gif

   「ずどどどどど・・・」

わたしが死にかけた、2度目の事件
というのは、山で遭難したのである。

当時、わたしは15~6歳であった。

そのころわたしは、学生時代は登山部に所属して
いたという父に連れられて、頻繁に山登りをしていた。

たしか、2週間に1回のペースで、1年間に
26~7の山を制覇したものと記憶している。

その年の夏、父とわたしは、九州の最高峰で
ある、屋久島の宮之浦岳登頂ツアーに参加した。

屋久島は鹿児島県の約5~60キロほど南に位置し、
九州の高山トップ10のうち、7つが集中している。

「島」というよりは、ひとつの大きな山なのである。

わたしは、思春期のど真ん中。生意気盛りで、
「登山に関する知識や経験なら、オレのほうが、
誰よりも上だ」
などと、自分勝手に思いこんでいた。

そのせいもあって、やれ「宮之浦岳では毎年、死人が
出る」
だの、「大変危険な山なので、ツアー・ガイド
の指示には、くれぐれも従うように」
などという
ゴタクには、ほとほとウンザリしていた。

キチンとした装備と、多少の体力さえあれば、
宮之浦岳は、九州最高峰とはいえ、恐るるに
足りない。・・・・・と、わたしは甘く考えていた。

ところが、いざ登りはじめてみると、この山、登山
口にさしかかるまでが、とんでもなく長いのである。

今ならば、登山口まで、車でスーッと行ってしまう
かもしれない。が、なにしろ20年も前の話である。

まだ夜も明けぬ4時ごろ、出発。平坦な道を延々と
4時間ほども歩いて宮之浦岳のふもとへ。それから、
ようやく登山開始なのであった。

そして昼ごろ、ようやく山頂に到着したころには、
ツアーに参加したメンバーもすっかり打ち解けて、
「登山のプロ、大ベテラン」のグループと、
「登山の初心者、お年寄り」のグループに、
なんとなく、自然に2分割されてしまっていた。

当時、15歳だったわたしは、ツアー参加者のなか
では最年少で、両方のグループから可愛がられた。
けれども、そのどちらにも所属していなかった。

この日は、ときおり小雨がパラつく、あいにくの
天気であったが、雄大な自然のなかを、ただ黙々
と歩く。わたしは、登山がキライではなかった。

124.gif

   「ゴルァ! 待たんか~い!」

さて、宮之浦岳、山頂からの帰り道。

ツアー・ガイドを含めた「登山のプロ、大ベテラン」
グループは、さっさと先に行ってしまい、わたしの
父を含めた「登山の初心者、お年寄り」グループは、
わたしのはるか後方をゆったりと歩いて、いつしか
わたしは、一人旅になってしまっていた。

もともと人付きあいが苦手で、孤独なタチである。
小学生のときに、近所の悪友どもと付きあうことを
禁じられて以来、わたしは誰かとつるんだことがない。

そんな性格だったから、自由気ままな一人旅は、
むしろ、わたしの性にピッタリ合っていたのだ。

「あれ? 道、間違えたかな?」

と、イヤな予感がしたのは、わたしが一人旅に
なってから、しばらく歩いたときのことであった。

前にも、後ろにも、誰もいない。

九州の山道には、迷子にならないように、どこにでも
必ずついている、ビニールテープや、ペンキで塗った
目印らしきものも、いつのまにやら、
ひとつもなくなってしまっている。

「まぁ、道らしきものはあるし。このまま下って
行けば、いずれ出発地点には、たどり着くだろう」


それから、わたしは30分ほど歩いた。

わたしが歩いていた細い道は、やがて、
あたかもロウソクの炎が消えるかのように、
スッ・・・、と、ヤブのなかへと消えていった。

「道に迷った!」

そう確信した瞬間、
わたしは、全身が総毛だった。

「それに、もう、時間がない!!」

ヤブの向こうに、赤々と沈んでゆく夕陽が見えた。

125.gif

   「オマエのほうこそ、待たんか~い!」

それからのわたしの行動は、すばやかった。

わたしは、歩いてきた道を、全速力で駆け戻った。

「あははははは・・・・・」

ここまで12時間以上も歩き続けて、すでに
疲れは、とうに限界を超えてしまっていた。

しかし、わたしは戻らなくてはならない。

わたしは、まだ、若かった。
まだ、死にたくはなかった。

「あははははは・・・・・」
「あははははは・・・・・」


半狂乱、とはこのことを言うのであろう。
わたしはこのとき、なぜか、こみあげて
くる笑いを、抑えることができなかった。

赤ちゃんを抱きかかえて「高い高い」をすると、
キャッキャッ、と喜んでいるように見えるのは、
実は、恐怖のあまり、痙攣しているのだとする
説があるけれども、わたしが、恐怖のあまりに
笑ってしまった、というのは、後にも先にも、
これが最初で最後であった。

「あははははは・・・・・」
「あははははは・・・・・」
「あははははは・・・・・」


ひきつり笑いながらも、わたしは必死に走った。

心臓がバクバクして、口から出そうに
なった。それでもわたしは走り続けた。

ようやく宮之浦岳の登山道へ戻ったとき、
あたりはすでに、暗くなりはじめていた。

しかし、これは確かに、正式な登山道。

「ここまで来れば、とりあえず、ひと安心だ」

と思うと、これまでの疲れがドッと出た
のか、わたしはゆっくりと歩きはじめた。

もう、真っ暗で、なにも見えない・・・
という、ギリギリのところで、
わたしは、出発地点にたどり着いた。

「アッ、戻ってきた!」
「おお! 無事だったか!」


登山ツアーのメンバーから、
続々と歓声が沸きおこった。

「申し訳ありませんでした! 
ご心配を、おかけしました!」


わたしは、ツアーの全員に土下座して、詫びた。

「なにはともあれ、無事でヨカッタ、ヨカッタ」と、
わたしを取り囲む人々のなかに、父の姿が見えた。

「あと30分で、捜索願いを出すところだったよ」
と、父は静かに、安堵の笑みを浮かべて見せた。

  1. 2006/10/03(火) 17:26:06|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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カーペット

カーペット http://cobaea.archiunite.net/
  1. 2008/12/01(月) 03:34:21 |
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ここの管理人 : 木塚ベラ (きずか ベラ) 氏。


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久留米大学附設高校中退。大学検定試験を経て、早稲田大学第一文学部卒。中学校講師を依願退職後、フリーに。現在、エッセイスト・株式投資家・小説家・心理学者。

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