★夢幻泡影★ (むげんほうよう)

~尽きてゆく魂の詩~

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ケバい女

3~4年ほど前まで、愛知県にある工場で
働いていた。そこは主に、銀行のATMや、
JRの券売機を生産している工場であった。

しかし、わたしが所属していた部署というのが
少し変っていて、大型の発券機を3台作ったか
と思えば、新札に対応する新機種を作るために、
設計部の連中と、ああでもない、こうでもないと、
議論と試作を重ねる。その片手間にプリンター
を5台作る。といった感じで、その日の仕事は
工場に行ってみなければ分からないのだ。

少量の受注に対応したり、試作品の開発に
当たったりするという、やや特殊な部署に、
わたしは配属されたのであった。

設計図をホイと渡される。工場中を歩き回って、
組み立てるのに必要な部品を集める。そして、
組み立てる。なんだかプラモデルを作っている
みたいで、仕事は楽しかった。

工場は社員が3割で、7割がアルバイトだった。
けれども、おなじ派遣社員でも、ほかの連中が
やっている、単調なライン作業とは違って、
オレは特別な仕事をしているんだ、という、
奇妙な優越感もあった。

しかしそれ以上に、この仕事が続いた理由は、
この工場の片隅に仮眠室があったからである。

体が貧弱なわたしには、1日8時間の労働は、
たとえそれがどんな簡単で、どんなに楽しい
仕事であっても、辛いものであった。昼食後
にとる20分間の仮眠が、わたしにとっては、
非常に大事な、生命線だったのである。

わたしはガヤガヤと騒いだり、うるさいのが
嫌いなので、午前10時と午後3時の休憩の
ときには、わざわざ工場の1階から2階まで
歩いて行って、人の少ない休憩所を選んでは、
そこでタバコを吸っていた。

そんなある日のことであった。

054.jpg

工場の2階に、新入りがやってきた。

ケバい女であった。

もともとこうしたアルバイトは人の入れ替わりが
激しい。ひどいのになると、1日、2日でやめて
いくような連中も、けっして少なくはない。

だから、社員や古参の派遣社員は、
新参者に対して、慎重である。「こいつ、
仕事できるのか? いつまで続くのか?」
そんな冷たく、批判的な目が常に光っている。

ところが、この新入りは、最初から突拍子も
なかった。ガラガラのダミ声で、しかも声が
やたらとデカい。「ネェネェ、誰かわたしと
セッ○スしない? 5本でいいわよ♪」

化粧は濃いけれども、顔は不細工ではない。
口さえ開かなければ美人なのだが、性格が
最悪な上に、とにかくよくしゃべる。

休憩室にいるすべての人間の注目を浴びて
いなければ気が済まない。アホ丸出しで、
しかも自己顕示欲の塊のような女であった。

禅寺のような静けさを求めるわたしが、
あろうことか、休憩のたびに、この女の
ダミ声を聞くハメになってしまったのだ。

そもそも、わたしは女が嫌いである。

と言ってもゲイ( ♂が好きなワケ )ではない。

甘い香りを発して、寄ってきた
男を、寄生虫のように食い尽くす。
その、「女という生き方」が嫌いなのだ。

「あ~あ、競馬で15万円もすっちゃった。
先週もらった給料が1日で全部パーだよ!」

「オイオイ、メシとか、どうすんだよ?」
この女、どういうワケか2階の同僚の
男どもには人気があるようであった。

「朝食と夕食は女トモダチの家を渡り歩いて食い
つなぐとして、とりあえず今月は昼メシは抜きネ・・・」

そんな会話で、静かだった2階の休憩室が、
騒がしくなってきたので、わたしは「そろそろ
休憩室を変えようかな」などと考え始めていた。

053.jpg

それからしばらくたった、ある日のこと。

午前の仕事が長引いたせいで、わたしはいつも
より遅い昼食をとっていた。正規の休憩時間では
ないので、誰もいない休憩所で、ひとり、わたしは
コンビニおにぎりをほおばっていた。

するとそこへ、あの、ケバい女がやってきた。

女はわたしと背中あわせに座ると、
ふぅ~っ、と深いタメ息をついた。

「お腹がすいた」「心底、疲れた」
そんな、長い、長いタメ息であった。

この女と、互いに面識はなかった。

性別はもちろんのこと、性格も生き方も、
ものの考え方も、まったくかけ離れた2人が、
いまこうして、ひとつの空間を共有している。

そのことに、わたしは人生の面白さを感じていた。

これから、この女がどうなるのか、どういう人生
を歩むのか、わたしの関知するところではない。

それに、わたしは、女が嫌いである。

けれども、彼女がこれから歩むであろう人生の中で、
「わたしの人生、悪いことばかりではなかったわ」
と言えるようなことが、一つぐらいあってもいいの
ではないだろうか?

この広い世の中で、「お金ばかりが人生じゃないん
だよ」と、真摯に教えてくれる人間が、一人ぐらい
いてもいいのではないだろうか?

1183284988056b.jpg

わたしは、おにぎりを食べ終わると、コッソリ自分の
財布の中をのぞいて見た。あいにく、千円札も五千
円札も不在であった。が・・・ 「まぁ、いいか」

わたしはおもむろに立ち上がり、スッと、この女の
横に座ると、その手の中に、一万円札を握らせた。

「これで、たまには、うまいものでも食え」

女は突然の出来事に、「エッ?」「エッ?」と
繰り返すばかりであった。

「いつも昼メシ抜きだと、せっかくの美人が
台なしだぜ」
と、わたしはウィンクをしてみせた。

まるで金魚のように口をパクパクさせて、なにか
言おうとしている女を無視して、わたしはいつも
のように、仮眠所へと向かった。

その次の日から、わたしは休憩する場所を変えた。

そして、それから間もなくして
わたしはこの仕事を辞めてしまった。

だから、このケバい女とわたしは、その後
一度として、顔を会わせることはなかった。

カッコよくネ? オレってカッコよくネ?

  1. 2006/07/19(水) 12:03:50|
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ここの管理人 : 木塚ベラ (きずか ベラ) 氏。


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久留米大学附設高校中退。大学検定試験を経て、早稲田大学第一文学部卒。中学校講師を依願退職後、フリーに。現在、エッセイスト・株式投資家・小説家・心理学者。

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